Report & Document of 長時間にわたるオフィスチェアの使用における実証実験

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実験レポート

高負荷環境におけるオフィスチェアの評価

○三家礼子、飯野瞳,桜井日香留,白石咲,綱井祐美子(早稲田大学)

日本人間工学会 第19回システム大会 講演集 (2011年3月)

高負荷環境におけるオフィスチェアの評価

○三家礼子、飯野瞳、桜井日香留、白石咲、綱井祐美子(早稲田大学)
The Evaluation of Office Chair under High-Stress Environment
Reiko MITSUYA, Hitom IINO, Hikaru SAKURAI, Saki SHIRAISHI, Yumiko TSUNAI(Waseda University)

1.はじめに

従来のオフィスチェアの評価は、短時間実験、小数の被験者、PC作業であるなどが一般的である。
そこで、本研究では被験者自体に高い負荷を与え長時間椅子に着座してもらい、集中した作業を行う実験環境を設定する。まず、集中作業として被験者に長時間ゲームプレイを行わせ、被験者を日常的に長時間ゲームに触れているプレイヤーとすることで、データの変動を解消する。実験対象とするオフィスチェアを長時間、身体を酷使する環境下で評価することを目的とする。

2.実験

2.1 被験者日常的に長時間ゲームに触れているプレイヤー3名
2.2 客観的測定
① 心拍測定
② NIRS測定
③ VIDEO撮影
2.3 主観的測定
① 負担部位評価項目
② 短縮版JUMACL(気分・感情を測る)
③ 多面的感情状態尺度短縮版(ポジティブ・ネガティブ気分を測る)
2.4実験時間
1時間プレイ後10分の休憩を5セット/日、これを三日間
2.5使用ゲーム
オフラインゲーム、オンラインゲームで、 Xbox 360で「Halo: Reach」を使用
2.6比較対象オフィスチェア
対象とする椅子、ChairAは長時間、仕事に集中でき、高い評価を得ている。その椅子と同格の高評価チェアをCairBとする。最後、一般的なオフィスチェアをChairCとする。

3.結果

全ての評価尺度にて比較オフィスチェアの傾向が得られた。各節における結果は、客観的測定、主観的測定、両方を行った被験者1名の例を示す。

3.1 心拍測定
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ChairAの心拍数の変動が小さい。
次に心拍変動(HF成分、LF成分、LF/HF成分)
を示す。
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Chair Aの場合

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Chair Bの場合

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Chair Cの場合

ChairAのHF成分が低くなることはない。リラックスの状態が保たれ、交感神経/副交感神経のバランスも良い。

3.2 NIRS測定

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心拍数の変化同様、ChairAの脳血流の変動が少ない。

3.3 負担部位評価

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Chair Aの場合

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Chair Bの場合

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Chair Cの場合

全ての部位についてChairAの負担は全被験者で少ない。

3.4 JUMACL
EA はエネルギー覚醒を表し、TA は緊張覚醒を表す。作業負荷は緊張覚醒を増し、エネルギー負荷を低下させると言われている。

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Chair Aの場合

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Chair Bの場合

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Chair Cの場合

ChairAはEA、TAともに時間的変化でバランスが良い。EAが下降することはない。

3.5 多面的感情尺度

ポジティブな気分とネガティブな気分を測るものである。例えば、好きな作業を行っている場合は、ポジティブな気分でいるほうが長く作業が続けられる。ネガティブな気分が悪いわけではない。例えばネガティブだと深い認知処理ができたりする。図は左から抑鬱_不安、倦怠、非活動的快、集中、敵意、活動的快、親和、 驚愕を示す。
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Chair Aの場合

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Chair Bの場合

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Chair Cの場合

Chair Aはこの被験者については集中と非活動的快が他に比べ高い。

4.考察

客観評価については、心拍数が ChairAについては低めであったことが全被験者において、言うことができた。約6時間という時間とプレイ中の動きについて椅子による差が出たことは意味があった。また、NIRSも同時に測定したが、あえて被験者をゲームに対し、スキルがトップの被験者を得たことにより、各プレイで安定した脳血流を見ることができた。これは素人のプレーヤーで実験を行うと、データにバラツキが見られるが、日常的に長時間ゲームに触れているプレイヤーでは常にゲームに対する反応が冷静であると考えられる。心拍変動の安定性からも同じことが言える。主観評価については、本研究では3種類の質問用紙を用いた。オフィスチェアの評価であるから負担評価を行うことはもちろんであり、客観評価との対応もとれている。また、各オフィスチェアの差異を見出すために、今回はあえて気分・感情を測るための質問を行った。気分・感情は複雑で、各被験者の性格によるものか始めからの気分、感情によるものか多少のバラツキが見られた。
日常的に長時間ゲームに触れているプレイヤーであっても集中して快適な気分でプレイをする者もいれば、最初からよい意味での敵意を持ってゲームを持続的にプレイする者もいることが分かった。

5.まとめ

本研究では、5時間という長時間の作業負荷を与え、かつ日常的に長時間ゲームに触れているプレイヤーでもストレスの高い対戦ゲームをオンライン、オフラインで行った。その結果、各被験者のデータにバラツキがなくオフィスチェアの比較も可能にした。心拍測定と NIRS測定という負荷もあったが、明確な実験結果を得ることができたのは有意義であった。今後は、ビデオ解析と心拍変動、 NIRS測定結果との対応、ゲームスコアとの関連性も行う予定である。

謝辞

本研究を行うにあたり、試料提供をいただいたハーマンミラージャパン、被験者になっていただいた㈱グルーブシンクの松井様、増山様、山本様、機材提供をいただきました 日本マイクロソフト株式会社に感謝いたします。

連絡先
三家礼子
〒169-8555
新宿区新大久保3-4-1
早稲田大学 理工学術院 国際情報通信研究センター 河合研究室



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